読みたい本はどんな本?

読んだ本についての感想と、気分で選べるようにジャンル分けをできればなあと。

『四畳半神話大系』森見登美彦 一般文芸/並行世界

[一般文芸]
角川文庫 平成20年3月25日 初版発行
397ページ。2センチほどある厚めの本。文章もぎっしりだが、軽快なストーリーなので読書に親しみ始めたばかりでも読みやすいかと。

[キーワード]
並行世界、大学生、京都、恋

[私的なキーワード]
悪友、もしもへのアンサー

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ざっくりあらすじ

大学の三回生である私は思い描いたキャンパスライフから遠く離れて、ひっそりとぼろぼろの四畳半に住んでいた。来客は悪友の小津ばかり。

もしも、大学一年時に今の所属以外の選択肢を選んでいれば、バラ色のキャンパスライフがあったに違いない。私は今の境遇を悔やみそんなことを思ってしまう。一年時にあった選択肢は四つ。

映画サークル「みそぎ」
「弟子ム」のチラシ
ソフトボールサークル「ほんわか」
秘密機関〈福猫飯店〉

このうちのどれを選んでも関わりある人間関係があり巻き込まれる騒動があり、最終話、80日間己の四畳半をひたすら彷徨う中で、私は自身の考えと向き合い始める。

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感想

『もしもあのときああしていれば』というのは誰しも一度くらい思ったことがあると思う。その後悔に対して、実にコミカルに『さあそれはどうかな?』と返している。

けれど痛烈な皮肉ということは全くなくて、奇想天外な行動を起こす登場人物たちが見ていてとても面白く、似通う設定の四つの話を飽きずに読める。

特に最終話の四畳半の冒険はすごい。扉を開けども開けどもその先はまた自分の四畳半。窓の向こうも四畳半。
彷徨った先で壁を壊すという暴挙に出てもまた同じ四畳半。

主人公の語り口調が面白いながら、ひしひしと絶望もしっかり感じるし、当然にあったものへの恋しさが切々と伝わってくる。この最終話で主人公か葛藤し見つける感情こそが、おそらく全話にあった『もしも』に対するアンサーなのだろうなと思った。

それから。移動があって無いような四畳半という空間を舞台にして飽きさせずに読ませるのは、森見さんのすごいところだと思った。


以下、ものすごく気になったくだらない点を挙げる。

四畳半の移動の際、遭難の際に部屋にあった物質も変わらず存在する法則を発見し、幸運にも千円札が無限増殖する錬金術を発見する。
でも、同じものが無限増殖するわけだから、お札の通し番号が同じということで、大量に一気に使ったら非常にマズイのではと思いました。まる。