読みたい本はどんな本?

読んだ本についての感想と、気分で選べるようにジャンル分けをできればなあと。

『破戒』島崎藤村/差別

[純文学]
1906年3月25日
443ページ
数日かけて読むことを推奨。長いが、流れが軽快。こまめに章で分かれているため読みやすい。語彙も程々に学べる。

[キーワード]
差別

[私的なキーワード]
職業、生まれ

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ざっくりあらすじ

学校の教員を務める丑松は、下宿先で差別的扱いにより追い出された人を見て、自身も蓮華寺へ引越しすることを決める。

丑松自身も、人に知れれば差別を受ける、穢多の出生であったのだ。山奥で牧夫としている父からは、決してその出生は他言するな、どんな人にも打ち明けるなと固く言い聞かされた。

けれども、同じ穢多でありながら、それを公言して本を書き綴っている猪子蓮太郎という人物がいる。丑松はその人の本を読み込んで、深く感銘を受け、交友を結んでいた。

そうして、煩悶する。この出生を、猪子先生にだけは打ち明けてしまおうか。打ち明ければ、同じ穢多どうし、今よりきっと懇意にできるはずだ。いや、打ち明けてしまおう。そう決心するも、心の奥底から父の戒めが囁くのである。

『隠せ。』


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感想

見た目にも、血にもわからないような、後天的に人為的に作成された身分で生き方が決まってしまう世界は、昨今では、少なくとも私には想像に難しい。

けれど、私が知らないだけで思い悩む人はいるのだろうし、私の軽口がもしかしたら友人知人の心をすっ、と傷つけているのかと思ったら恐ろしくなった。物語でも、丑松は事情を知らない友人から色々な言葉をうける。

そんな中で、同じ身分をもち辛い目にあいながらも、書を認め講演会を開いて奮闘している猪子先生に、丑松が深い尊敬の情を抱くのはもっともだと思った。

父親の隠せという言葉を守らねばと思う反面、言って打ち解けたいと願う心に板挟みにされて煩悶するのは、さぞかし辛くあったろう。家族以外の人間と、打ち解けることができる喜びは深い。

ただ、一点。

その猪子先生であるが、世間の逆境にも負けずよく奮闘されているとは思う。
けれども、卑劣を暴くためにお嫁さんの身分を知らない人にまで結果暴くことになったのは如何なものかとも思った。

誰かの不正を暴くのに、また誰かが暴かれて良いものなのか。そこの点は猪子先生には見えていない気がした。