読みたい本はどんな本?

読んだ本についての感想と、気分で選べるようにジャンル分けをできればなあと。

『紙の動物園』ケン・リュウ SF/母と息子

[SF]

ハヤカワ文庫 SF2121 2017年4月15日 発行

24ページ。日常がベースで、少し不可思議が混ざっている。難しい言葉や表現はないのですんなり読める。人との待ち合わせや電車の移動の最中に読み終える。



[キーワード]

国、母、息子、ハーフ、魔法

[私的なキーワード]

悲しみ、後悔、迫害

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ざっくりあらすじ


舞台はアメリカ。主軸の少年の実母は、中国からカタログで買われた女性。


幼いころ、少年が泣くのをあやすため、母は包装紙を折って虎を作ってくれた。母は魔法使いで、虎に息を吹き込むと虎は自由に動き回るようになり、その日から折り紙の虎は少年の相棒になった。


けれど、あるとき、現代的なおもちゃを持つ友人に、紙の虎をさして紙クズ呼ばわりされてしまう。おまけに、周りと違う容姿をさして中傷をうける。


そのときから、少年の母への気持ちは変わっていった。英語を話せない、アメリカ料理を作らない、不適切な母親への憤りが強くなって、次第に会話もなくなっていった。ずっと病気を我慢していた母が病床に伏しても、その気持ちは変わりなかった。


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感想


一つの国で育って、親族も一つの国で構成された自分にとって、環境こそ遠く感じそうなのに、その心は全くわからないでもないと思った。少数派だから、まわりとあわせたいと思う部分とか。

少数派といったって、特別なことではなくて、たとえば人より少し背が低いとか、そういう部分からくる気持ちも遠くないのでは。それが、ここでは文化とか容姿とかに表れているのかなあと。


話に言及していく。

母には自国の言葉や文化を子と共有することへの希望があって、けれども、異なる世界には異なる世界の文化があって、その両立の配分が難しい。

自分の文化を大切にするのは大事だと思うけれど、相手の文化を尊重して歩み寄ることも、その土壌で生活するならば大切なことだと思う。わかってほしい理解されたいと望むなら、自分も理解してわかろうとしないと、誰とも歩み寄れない。

それに、大人に世界を区切られる子どもがいるならば、大人はせいいっぱいの配慮をしてあげなければ辛いだろう。


だからといって、この話に出る母と息子、どちらが悪くてどちらが正しいなんてことは一切言わない。どちらの気持ちも、理由は異なれど全くわからない気持ちではないからだ。

特に、後半、母親から手紙を託されるのだけれど、その母の半生を読んで、最後の痛切なつぶやきをなぞると、とにかく辛い。母親とは、母親であるまえに、一人のひとであることをしみじみと感じる。


それ故の息子の後悔も。幼い頃に親を傷つけた事実が、未来の自分もやがて傷つけた。けれどいなくなった人には許してもらえないし、謝れないから、どうやって抱えて、解消していくのだろう。