『島原心中』菊池寛 純文学/心中のその後
[純文学]
20ページほどで、はやければ20〜30分で読了
ちょっとばかし血なまぐさい
心中、法律家
[私的なキーワード]
憐れみ
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ざっくりあらすじ
島原といえば有名な場所で、様々な話で絢爛豪華な描写で舞台になっていますけれども、この島原心中は華やかなころから時を経ての島原が舞台。法律家の登場人物が、心中の検分のために11月の午後に廓の中へはいると、待っていたのは物語の世界とはかけはなれた、暗澹、陰鬱な島原でした。
法律家は生き延びた男へ尋問をはじめます。どうして心中なんてしたのだい、どうやって女は命を絶ったのだい。法律家の心は、男と女への同情よりも、まずはこの事件が何の刑にあたるのか、例えば自殺幇助になるんじゃあないかという考えから、男へ問いかけていきます。
しかし、男への尋問に目処がついて、女の解剖を見るように呼ばれてから、女の疲れ果てた生活のはての体を見てから、法律家の中に違った感情が芽生えるのでした。
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感想
この、法律家の心の動く様が、私にはとてもおもしろかった。女への哀れみを強くしたとき、法律家が自問自答をはじめるのだけれど、法律とは、人情とはと問いかけるところで、いったい私はこの法律家の立場のとき、何を肯定するだろうと考えてみた。肯定したいことと、実際に肯定していることとは別なもので、いざ考え直すと自分の中にあったしらない価値観に直面してしまったりすることも。
あとは、女を雇っていた家のおかみとの、最後のやり取り。息絶えた女の指輪をめぐって法律家とやりとりをするシーンはみんなどう感じるのか気になりました。